「過労死等ゼロ」緊急対策

 平成28年12月26日に厚生労働省の長時間労働削減推進本部から発表された「過労死等ゼロ」緊急対策には、違法な長時間労働を許さない取り組みの強化策として、以下のとおり明記されています。


< 違法な長時間労働を許さない取り組みの強化 >
(1)新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底
(2)長時間労働等に係る企業本社に対する指導
(3)是正指導段階での企業名公表制度の強化
(4)36協定未締結事業場に対する監督指導の徹底

(1)新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底
 企業によっては始業時刻や終業時刻が曖昧な状態となっていることがあり、こうした曖昧な管理を防止するためにも、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準(平成13年4月6日付け基発第339号労働
基準局長通達)」が定められていました。

 この通達を基準として、平成29年1月20日にさらに詳細に定められた新ガ
イドラインが策定されました。
 注目すべきポイントとして、従来の通達では労働時間について記載されていませんでしたが、新ガイドラインでは「労働時間の考え方」が明確化されて追加されました。

 その他、自己申告制の時間管理の内容や賃金台帳の適正な調製なども追加され、今後の労働基準監督署による指導根拠にもなりますので、この新ガイドラインには目を通しておくべきでしょう。

参考:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf


(2)長時間労働等に係る企業本社に対する指導
 平成29年から企業幹部に対し、長時間労働削減や健康管理、メンタルヘルス対策(パワハラ防止対策を含む。)について指導し、その改善状況について全社的な立入調査により確認するという新たな取り組みが始まりました。

 これは、本社を中心にして過重労働対策に取り組むことを求めるものであり、複数の事業場を有する社会的に影響力の大きい企業で、概ね1年間に2カ所以上の事業場において重大で悪質な労働時間関係違反などが認められる場合に行わ
れます。


(3)是正指導段階での企業名公表制度の強化
 従来は、違法な長時間労働(月100時間超の残業を行っている労働者が、10人以上または4分の1以上いる場合(労基法第32条等違反))が1年間に3事業場認められた場合、企業名が労働基準監督署などからプレスリリースによって公表されていましたが、現在では、月100時間超から月80時間超に時間の基準が変更されるほか、過労死や過労自殺で労災支給が決定した場合も対象となるなど、企業名公表の要件が拡大されています。

参考:http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000147158.pdf


(4)36協定未締結事業場に対する監督指導の徹底

 36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)は、時間外労働が行われる事業場において締結し、管轄の労働基準監督署に届け出なければなりませんが、支店や営業所によってはその内容と実態との乖離があったり、そもそも締結を
していなかったりなどで労働基準監督署から指導を受ける企業が少なくありません。

 また、36協定の締結にあたっての従業員代表者の選任方法や適格性、協定の周知などについて労働基準監督官が直接従業員にヒアリングをして違法性を確認するケースもありますので、今まで以上に運用管理については徹底していかねばなりません。


企業としての対策

 将来に向けての労働力人口の減少は、統計データからも明確に読み取ることができ、早い段階からその対策を考えていかなければ、過重労働が解消されるどころか、現在働いている従業員にさらに負荷がかかっていくことは自明の理です。

 もはやこれは時代の流れと受け止め、全社一丸となって働き方改革を推進し、在宅勤務を認めたり、非正規従業員が活躍できる場を与えたりするなどの対策を講じていかなければなりません。

時には、取引先の見直しにまで踏み込むことも必要になるかもしれません。

                                                (芝池)

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編集後記
 9月は夏から秋に替わる節目の季節ですが、この機会に私も新しいことに
チャレンジしていきたいです!(新澤)
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